3Dプリンターでフィギュアの作り方|初心者

初級:筆者の経験では、初回は週末2日、合計で8〜12時間ほどを目安に小型モデル1体を進められました(あくまで筆者の実例です)。 ただし、モデルの複雑さや後処理の量、作業環境によって所要時間は大きく変わります。
筆者が最初に完成まで持っていけたのも、既成STLの6〜7cmキャラ1体でした。
洗浄が甘くて表面が少しベタつき、「失敗したかも」と焦った一方で、サーフェイサーを吹いた瞬間に“試作品”っぽさがすっと消えて、3Dプリンター製フィギュアが一気に完成品へ近づく感覚をつかめたんです。
Formlabsの方式比較でも、FDMは導入しやすく、光造形は小型造形で表面品質を取りやすい流れがはっきりしていて、入門時は「扱いの手軽さ」か「見た目の完成度」かを先に決めると迷いません。
読み終えるころには、自分に合う方式を判断して初回の準備リストを作り、小型モデル1体を最後まで完走できるところまで持っていけます。
3Dプリンターでフィギュアは本当に作れる?まず知っておきたい全体像
3Dプリンターの基本
3Dプリンターでフィギュアを作ることは、結論から言えば十分可能です。
仕組みはシンプルで、まず3Dデータを用意し、その形をプリンター用にスライスして、薄い層を1枚ずつ積み重ねながら立体にしていきます。
キヤノンやリコーの解説でもこの考え方は共通していて、いわば「デジタルの原型を、層で実物化する装置」と捉えると全体像がつかみやすくなります。
個人のフィギュア制作で主流なのは、大きく分けてFDM/FFFと光造形です。
『Formlabsの方式比較』でも整理されている通り。
FDM/FFFはPLAやPETGなどのフィラメントを熱で溶かして積む方式で、導入コストを抑えやすいのが特徴です。
一方の光造形は、液体レジンを光で硬化させながら形を作る方式で、小さなフィギュアの顔や髪束のような細部表現に向きます。
家庭用では光造形の中でもLCD/MSLA系が広く普及しています。
見た目の違いも把握しておくと、方式選びで迷いません。
FDMは一般的に0.4mmノズルが基準で、XY精度の目安は±0.1〜0.3mm程度です。
積層ピッチを0.1〜0.15mmあたりまで詰めると見た目は整ってきますが、直出しの状態ではどうしても積層痕が残ります。
筆者の感覚でも、FDMの出力直後は“試作物”の空気が強く出ます。
ただ、そこから研磨してサーフェイサーを入れると印象が一変します。
表面の段差が落ち着き、塗装の乗りも安定して、同じ出力品とは思えないほど完成品に近づきます。
対して光造形は、出力直後の時点で表面が滑らかです。
小型フィギュアではこの差がそのまま見栄えに効きます。
ただし、出した瞬間に完成ではありません。
未硬化レジンをきちんと洗浄し、UVで二次硬化まで終えてはじめて造形物として落ち着きます。
筆者も最初のころ、洗浄や硬化を少しでも省きたくなったことがありますが、その状態だと表面にベタつきが残ったり、エッジが頼りなく感じたりします。
滑らかさの裏側に、後処理の手間がきちんとあるわけです。
フィギュア制作の流れは、工程ごとに役割を分けて理解すると整理しやすくなります。
-
データ準備
ダウンロードしたデータ、自作モデリング、3Dスキャンのいずれかで元になる形を用意する工程です。
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出力用調整
肉厚、分割、穴あけ、中空化、サポートを付ける向きの検討など、造形に耐える形へ整える工程です。
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スライス
積層ピッチやサポート条件を設定し、プリンターが読める出力データへ変換する工程です。
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出力
実際に積層して立体化する工程で、ここで方式ごとの特徴が最もはっきり出ます。
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後処理
サポート除去、洗浄、二次硬化、研磨、表面調整を行い、塗装できる状態へ持っていく工程です。
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塗装
サーフェイサーで下地を整え、色を重ね、完成品としての情報量を与える工程です。
この流れ自体は、『Wacomの3Dフィギュア解説』やFabmartの制作記事でもほぼ共通です。
今のフィギュア制作現場では、デジタルで原型を作り、3Dプリンターで出力して検証し、その後に複製や仕上げへ進む流れが一般的になっています。
アナログ原型と比べると、デジタルは左右対称の管理、表情や髪先の微調整、パーツの差し替え検討がやりやすく、出力して現物確認できるのも大きな利点です。
特に「頭部を2%だけ大きくしたい」「首の角度だけ少し戻したい」といった修正が短いサイクルで回せるので、完成前の検証密度が上がります。
フィギュア用データの形式ではSTLが今も定番です。
三角形メッシュだけを持つシンプルな形式で、多くのスライサーがそのまま読み込めます。
色やマテリアル情報まで含めたい場面では3MFやOBJもありますが、単色出力を前提にした個人の原型制作では、まずSTLを理解しておけば困る場面は少ないはずです。
なおSTLは単位情報を標準で保持しないため、書き出し時のスケール確認は地味に見えてつまずきやすいポイントです。
3Dプリント方式の比較:FDM vs. SLA vs. SLS
本記事では、デスクトップからベンチトップサイズの中小型業務用3Dプリンタの三大造形方式の特徴やメリット・デメリットを比較検証しています。
formlabs.com2025〜2026の環境変化
ここ数年で入門用の低価格FDM機が増え、以前より導入の心理的ハードルは下がっています。
具体的な価格例を示す場合は必ず該当製品の販売ページ等の出典を明示してください。
以前は本体価格で躊躇することが多かったため、本稿では「入門機は試作専用、本命は光造形で出す」という役割分担の考え方を紹介します。
一方で、導入しやすくなったぶん見落とされがちなのが運用コストです。
長時間出力では電力消費が1〜5kWhの一例があり、電気代に換算すると約0.10〜0.65ドル相当になります。
これは日本の実勢料金とは一致しませんが、少なくとも「1回の長時間出力で電力がゼロに近い」という感覚ではありません。
材料費だけでなく、連続稼働させる時間もコストとして見ておくと、想定が現実に近づきます。
材料側の選択肢も広がっています。
FDMならPLAが入り口として扱いやすく、試作や大きめパーツの確認に向きます。
光造形レジンは細部表現で優位ですが、洗浄液や硬化設備まで含めて運用する前提になります。
Formlabsのスタンダードレジンでは1Lあたり79ドルの例があり、方式を選ぶときは本体だけでなく材料サイクルまで見ておくと判断がぶれません。
フィギュアは小型だから何でも安く済む、というより、細かさを追うほど後処理や周辺用品の比重が上がる分野です。
データ面でも、今は「既成データを使う」「自分でモデリングする」「3Dスキャンする」の3つが整理しやすくなっています。
初回で完成まで持っていくなら既成データが最短で、モデリングは自由度が高い代わりに覚えることが一気に増えます。
スキャンは便利に見えて、結局は穴埋めや厚み調整などの修正が必要になるので、特殊用途寄りです。
筆者が初回に既成STLから入ったのも、造形そのものの感覚を先に掴みたかったからでした。
データ作成と出力の両方を同時に学ぶと、失敗の原因が分かりにくくなります。
安全と法的注意
フィギュア制作では、方式選びと同じくらい安全管理の差を理解しておきたいところです。
FDMは比較的扱いやすい方式ですが、光造形は注意点がはっきり多くなります。
未硬化レジンは皮膚に触れない前提で扱い、作業中は換気を確保し、ニトリル手袋と保護メガネを用いるのが基本です。
洗浄後はUVで二次硬化まで進めて、造形物だけでなくサポート片や汚れたペーパー、洗浄液の扱いまで含めて管理します。
NOTE
光造形で表面が妙にぬるつく、爪で押すと頼りない感触がある、といった状態は洗浄不足か硬化不足のサインであることが多いです。
見た目が整っていても、そこを飛ばすと塗装前の段階でつまずきます。
洗浄に使われるIPAは可燃性があり、500mLの高純度品はAmazonで約1,300円の例があります。
水洗い対応レジンでも、洗浄水をそのまま流せるわけではありません。
未硬化成分を含んだ廃液はUVで硬化させ、固形分を分けて処理する考え方が前提です。
「水で洗える」ことと「安全管理が不要」は別物です。
法的な面では、著作権侵害に当たる造形を避けることが大前提です。
既存キャラクターや既製フィギュアを無断で3Dデータ化し、複製や配布、販売につなげる行為は、複製や翻案に当たる可能性があります。
家庭内の私的利用であっても範囲は広くなく、第三者への委託や頒布が絡むと話は変わります。
元作品がある造形ほど、「作れるか」より「作ってよいか」を先に切り分ける必要があります。
もう一つ見逃せないのが、法令に反する用途へ踏み込まないことです。
たとえば外観が刀剣類に著しく似たものの携帯は銃刀法との関係が出てきますし、食品に触れる器具や容器は食品衛生法の考え方を無視できません。
3Dプリンターは形を作る道具なので、フィギュア制作の延長で別用途にも使えますが、作る対象によってルールがまったく変わります。
この線引きを最初に持っておくと、趣味として長く続けやすくなります。
フィギュア制作ならFDM/FFFと光造形のどちらを選ぶべきか
仕組みの違い
FDM/FFFは、PLAやPETGのような樹脂フィラメントをノズルで加熱して溶かし、糸を積むように1層ずつ形を作る方式です。
図解イメージで言えば、細い樹脂の線をホットボンドのように重ねて立体にしていく感覚に近いです。
家庭用では0.4mmノズルが一般的で、XY精度の目安は±0.1〜0.3mmほどとされます。
積層ピッチを細かくすると見た目は整いますが、フィギュア用途で表面を少しでも落ち着かせたいなら0.1〜0.15mm積層あたりがひとつの目安になります。
一方の光造形は、液体レジンを光で硬化させながら積み上げる方式です。
本記事ではSLADLPLCDMSLAをまとめて光造形と呼びます。
厳密にはSLAがレーザー走査方式を指す場合もありますが、家庭用ではLCD/MSLAが主流なので、フィギュア目線では「レジンを光で固める高精細方式」と捉えると整理しやすいです。
イメージとしては、液体の表面に1枚ずつ断面を“焼き付ける”ようにして積層していきます。
この違いは、フィギュアの見た目にそのまま出ます。
FormlabsのFDM vs SLA vs SLS比較でも、FDMは積層痕が見えやすく、光造形は表面が滑らかで小型造形に向くと整理されています。
比較例としても、FDM側のBambu Lab X1が120μm設定、光造形側のForm 4が100μm設定で並べられています。
フィギュアでは単純な積層ピッチだけでなく、XY方向の輪郭の出方も効いてきます。
6〜10cmのキャラを出したとき、光造形は髪先や瞳まわりのエッジがそのまま塗装工程に入れる輪郭で出てきます。
FDMはそこに一手間必要で、積層痕を処理する時間まで完成度に含めて考える方式なんですよね。
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フィギュア目線の比較表
フィギュア制作で気になる項目を、完成原型の見え方に寄せて並べると次のようになります。
| 項目 | FDM/FFF | 光造形(SLA/DLP/LCD/MSLA) |
|---|---|---|
| 仕組み | 熱で溶かしたフィラメントを線状に積層 | 液体レジンを光で硬化して積層 |
| 表面品質 | 積層痕が見えやすい。特に曲面や肌で段差が出やすい | 滑らかで、サーフェイサー前でも原型らしく見えやすい |
| 細部再現 | 0.4mmノズルでは顔・指先・髪束の細線表現に限界が出やすい | まぶた、髪先、装飾のエッジが残りやすい |
| 小型フィギュア適性 | 低〜中。大きめパーツや簡易試作向き | 高。6〜10cm級でも完成見本に近づけやすい |
| 後処理 | サポート除去、研磨、段差消しが中心 | 洗浄、乾燥、二次硬化、サポート除去、研磨 |
| 臭い・安全性 | PLA中心なら比較的扱いやすい。ABS系は臭いが増える | レジン臭、未硬化レジン、洗浄液の管理が前提 |
| 材料・運用コスト | フィラメントが安価で、失敗を重ねても痛手が小さい | レジンに加えて洗浄液、手袋、硬化環境まで必要 |
| 導入のしやすさ | 本体も運用も入りやすい | 本体以外の周辺準備まで含めると一段重い |
| 初心者向きの結論 | 大型、試作、低コスト重視なら有力 | 小型、高精細、完成度重視なら本命 |
この表を見てもわかる通り、「初心者向き」という言葉は1つでは片づきません。
機械そのものの扱い始めやすさならFDMですし、フィギュアとして見栄えのするものを最短距離で出したいなら光造形です。
ここが混同されやすいポイントです。
コストと運用負荷の実感
費用感は本体価格だけでなく、1体作るまでに何を消費するかで見たほうが現実に近いです。
FDMはフィラメント主体なので、材料の考え方が比較的シンプルです。
失敗出力が出ても、削って再挑戦する心理的ハードルが低いのは大きな利点です。
大型パーツや分割検証、ポーズ確認用の試作を何回も回すなら、この気軽さが効いてきます。
光造形は、出力物の見栄えが良いぶん、運用コストの内訳が増えます。
たとえばFormlabsのスタンダードレジンは1Lあたり$79の例があり、ここに洗浄用のIPAや水洗い対応レジン用の処理環境、ニトリル手袋、保護メガネ、UV硬化の設備が加わります。
Amazonでは高純度IPA 500mLに約1,300円の例があり、レジン本体以外もじわじわ積み上がります。
電力消費は長時間出力の一例で1〜5kWh程度とされていて、出費の中心は電気代より材料と消耗品だと捉えたほうが実感に近いです。
海外の参考値では、6インチ程度の中空アートトイで材料コストがRM 9〜24、SGD 3〜8という例もあります。
ただしこれは日本国内の実勢価格ではなく、あくまで「中空化すれば材料費はある程度抑えられる」という感覚をつかむための数字です。
フィギュア制作では、材料単価よりも失敗時にどれだけ再出力しやすいかが体感コストを左右します。
筆者としては、FDMは試作を何回も切れる方式、光造形は本番パーツを一気にきれいに出す方式として考えると腹落ちしやすいと感じています。
後処理の負荷も、両者で質が違います。
FDMは耐水ペーパーで段差を追いかける時間が長くなりやすく、220番や320番で当て始めて400番、600番へ上げる流れが効いてきます。
光造形は研磨量そのものは少なく済みやすい反面、洗浄と二次硬化を省けません。
つまり、FDMは表面を削って整える手間、光造形は化学的な後始末をきっちり回す手間が中心になります。
どちらが重く感じるかは、作業机の置き方よりも、臭いと手袋作業を受け入れられるかで分かれます。
TIP
小型フィギュアを何体も塗装前提で作るなら、光造形の「出力直後の面の静かさ」は思った以上に効きます。
逆に、ポーズ検討や台座合わせを何度も回す段階では、FDMの気軽さが制作テンポを落としません。
初心者向けの結論
フィギュア目線で結論を先に置くなら、小型で高精細な原型を作りたいなら光造形が本命です。
顔まわり、指先、髪束、アクセサリーの細部まで見せたい6〜10cm級では、この差がそのまま完成度に出ます。
光造形の出力品は「表面を整えてから塗る」ではなく、「もう塗装の設計に入れる」という位置から始められます。
一方で、大型パーツ、試作、低コスト運用を優先するならFDM/FFFが有利です。
たとえば頭身の高いキャラの胴体や台座、ポーズ確認用の仮組み、分割検証のような工程では、FDMのほうが回転率を上げやすいです。
積層痕は残りますが、そこに時間をかければ完成度はきちんと引き上げられます。
FDMはフィギュアに不向きというより、仕上げ工程込みで評価する方式と見たほうが正確です。
初心者にとっての分かれ目は、精度より先に運用許容度です。
臭い、換気、手袋、洗浄液の扱いまで含めて受け入れられるなら光造形。
そこにまだ抵抗があり、まずは3Dプリントの流れそのものを掴みたいならFDM。
この整理なら迷いにくいはずです。
導入の軽さはFDM、フィギュアとしての見栄えは光造形。
そのどちらを先に取りにいくかで、選ぶべき1台は自然と決まってきます。
必要なもの一覧:本体以外にそろえる機材・消耗品・安全対策
チェックリスト形式+表
3Dプリンターは、本体だけ届いてもその日のうちにフィギュア制作へ入れるとは限りません。
特に光造形は、材料・洗浄・硬化・安全装備までそろってはじめて一連の流れが回ります。
筆者も最初は本体とレジンだけ先に用意して、手袋と洗浄容器が足りずに作業が止まりました。
ここは「何を作るか」より先に、「机の上で一連の工程が途切れないか」で見ると抜け漏れが減ります。
最低限の構成を先に一覧化すると、次の8カテゴリで考えると整理しやすくなります。
- プリンター本体
- 材料
- スライサー
- 工具
- 安全装備
- 洗浄・UV硬化
- 換気
- 塗装用品
| カテゴリ | 代表アイテム | 用途 | 必須度 | 代替案 |
|---|---|---|---|---|
| プリンター本体 | FDM/FFF本体、光造形本体 | 造形そのものを行う中核機材 | 必須 | なし |
| 材料 | PLA、PETG、光硬化レジン、水洗い対応レジン | フィギュア本体の材料 | 必須 | 試作はPLA、本番原型はレジンという分担 |
| スライサー | FDM向けスライサー、光造形向けスライサー | 3Dデータを印刷用データへ変換 | 必須 | 汎用スライサー、プリンター付属ソフト |
| 工具 | ニッパー、デザインナイフ、ヤスリ、耐水ペーパー | サポート除去、バリ取り、面出し | 必須 | 細目スポンジヤスリ、模型用カッター |
| 安全装備 | ニトリル手袋、保護メガネ、マスク | 皮膚接触や飛散、臭気対策 | 光造形は必須、FDMでも推奨 | 厚手手袋、防じんマスク |
| 洗浄・UV硬化 | IPA、洗浄容器、水洗い用容器、UVライト、硬化BOX | 未硬化レジン除去、二次硬化 | 光造形では必須 | 日光硬化BOX、水洗い対応レジン用の洗浄水処理環境 |
| 換気 | 窓、換気扇、排気しやすい作業場所 | 臭気と揮発成分の滞留を減らす | 光造形は必須、FDMでも有効 | 窓開放+卓上ファンではなく、窓+換気扇の組み合わせ |
| 塗装用品 | サーフェイサー、塗料、筆、エアブラシ | 表面確認、下地作り、塗装仕上げ | 仕上げ前提なら必須 | 缶サフ、筆塗り中心の最小構成 |
光造形を選ぶなら、表の「洗浄・UV硬化」「安全装備」「換気」が本体と同列に近い扱いになります。
『Formlabsの比較解説』でも、方式ごとの差は解像感だけでなく、後処理と安全運用の違いとして整理されています。
フィギュア用途ではこの差がそのまま準備物の差になります。
代表カテゴリと用途の具体例
工具まわりは、模型制作の基本セットを流用できます。
サポート除去にはニッパーが中心で、細い支柱の切り分けや、面の近くを少しずつ落とす場面で出番が多いです。
切り残しやゲート跡の薄皮はデザインナイフで追い込み、面の均しは耐水ペーパーで整えます。
番手は220・320・400・600があると流れを組みやすく、荒削りから塗装前の下地までつなげられます。
筆者の経験では、耐水ペーパーは番手を飛ばさないほうが結局早いです。
220で作った傷をいきなり600で消そうとすると、手数だけ増えて面が乱れます。
320、400と順に上げたほうが、傷の消え方が読みやすく、表面も落ち着きます。
安全装備は、光造形で特に軽視しないほうがいい部分です。
手元にはゴム手袋という言い方でも通じますが、実際にはニトリル手袋が定番です。
100枚入りで約500〜1,500円の例があり、作業台に1箱置いておくと交換を惜しまなくて済みます。
目の保護には保護メガネ、臭気やミスト対策にはマスクを組み合わせます。
ニッパーでサポートを切ると小片が飛ぶことがあるので、防護メガネはレジン作業以外でも役に立ちます。
洗浄は、通常レジンならIPA、水洗い対応レジンなら水を使う流れが基本です。
IPAは高純度品500mLでAmazonに約1,300円の例があり、少量ずつでも意外と減ります。
筆者はここで密閉容器と計量カップを一緒に置くようになってから、作業の詰まり方が一気に減りました。
洗浄液を必要量だけ分けて使えますし、汚れた液と比較的きれいな液を分けるだけで、机の上が散らかりにくくなります。
水洗い対応レジンも扱いは少し軽くなりますが、洗浄水に未硬化成分が出るので、後始末まで含めて考える必要があります。
二次硬化にはUVライトやUV硬化BOXを使います。
UV-LEDは365nm、385nm、395nm、405nm帯の製品が多く、レジンの推奨波長に近いものを使うと工程が組みやすくなります。
簡易構成なら日光硬化BOXという考え方もありますが、直射日光下に無管理で放置すると、硬化ムラや変形の読み違いが起きやすく、作業手順として安定しません。
回転台つきの硬化BOXや、照射方向を変えられるUVライトがあると、フィギュアの髪裏や袖の内側も追いやすくなります。
塗装用品は、出力直後には不要と思われがちですが、フィギュアとして見栄えを整えるなら最初から最低限を視野に入れたほうが流れが止まりません。
入口としてはサーフェイサー、筆、基本塗料で十分です。
MonotaROではサーフェイサースプレー300mLで1本1,598円の例があり、表面の傷確認と下地色の統一に役立ちます。
エアブラシまで入れるなら、0.3mm前後の汎用口径が扱いやすく、入門セットは約10,000〜30,000円の範囲にありますが、最初の一体を完成させる段階では筆塗り主体でも成立します。
WARNING
光造形の作業場は、窓を開けるだけでなく換気扇まで回っている状態だと、臭気が机の前に戻りにくくなります。
手袋をしたまま顔まわりを触らない動線を決めておくと、作業後の後悔も減ります。
レジン廃液や洗浄後の汚れた液体は、そのまま流す前提では扱いません。
未硬化レジンを含む廃液は光で固化させ、固形分を分けてから自治体のルールに沿って廃棄する流れになります。
皮膚接触を避けること、作業中に素手へ戻らないこと、机にこぼしたまま放置しないことまで含めて、道具の一部として考えると運用が安定します。
コストの目安は“例”として提示
周辺用品の費用は、プリンター本体の価格より見落とされやすいのに、実際の制作テンポには強く効きます。
特に光造形は、レジンだけでなく洗浄液、手袋、容器、硬化設備が積み上がります。
材料コストの代表例としては、Formlabsのスタンダードレジンが1Lあたり79ドルです。
ここへIPAや水洗い用の容器、ニトリル手袋、マスク、保護メガネ、UVライトを足していくと、「本体を買えば始まる」という感覚からは少し離れます。
電力については、長時間出力の例で1〜5kWh、電気代で約0.10〜0.65ドルというデータがあります。
体感としても、普段の出費で効いてくるのは電気代より材料と消耗品です。
フィギュア制作は失敗を1回で終えないことが多いので、再出力分の材料と後処理用品まで見ておくと現実に近づきます。
FDM側はPLAのような扱いやすい材料から始めると、運用コストの構造が読みやすくなります。
試作や分割確認を何回も回す段階では、PLAと紙ヤスリ、ニッパー、サーフェイサーが中心です。
光造形は本番向けの見た目が得やすいぶん、毎回の消耗品が増えます。
どちらが安いかより、「何回失敗しても続けられる構成か」で見ると、必要なものの優先順位が見えてきます。
スライサー例
スライサーは、3Dデータをそのまま印刷できる形へ変換するための必須ソフトです。
FDM向けと光造形向けで役割が少し違い、前者は積層条件やサポート、充填率の調整、後者は配置・サポート生成・中空化・排液穴の設計まで含めて考えることが多くなります。
既成データを使う場合でも、スライサーを通さずに造形へ進むことはありません。
FDM向けでは、オープンソース系の汎用スライサーや、プリンターメーカーが配布する専用スライサーが代表的です。
光造形向けでは、MSLA系で広く使われる汎用スライサー、あるいはメーカー専用ソフトが中心になります。
どちらの方式でも、STLのほかOBJや3MFを読めることがありますが、フィギュア制作ではサポートの立て方と配置の追い込みが作業の肝になります。
小型フィギュアでは、データ側にも最低限の前提があります。
『Wacomのフィギュア制作解説』では、樹脂フィギュア出力の最低肉厚は0.5mm、理想は1mm以上と整理されています。
スライサーで見えている形がそのまま安全に出るわけではなく、薄すぎる髪先や袖口、支えのない細い装飾は造形途中で破綻しやすくなります。
だからこそ、スライサーは単なる変換ソフトではなく、出力前の最終検品の役割を持っています。
筆者は、スライサーの段階でサポート位置と中空化の確認を丁寧にやったデータほど、後処理が静かに進むと感じています。
逆にここを急ぐと、洗浄や研磨で余計な時間を取られます。
本体以外に何をそろえるかという話の中でも、スライサーは見えない主役です。
これがないと出力そのものが始まらず、これを使いこなせないと材料も消耗品も無駄になりやすいからです。
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3Dプリンターで印刷できるフィギュアをつくろう|ワコムタブレットサイト|Wacom
3Dプリンターで印刷できるフィギュアをつくろう
tablet.wacom.co.jp工程1 — フィギュア用3Dデータの入手・作成・出力向け調整
データを手に入れる3つのルート
フィギュア制作の実作業は、プリンター本体より先に「どの3Dデータを使うか」で流れが決まります。
入口は大きく分けて、既成データを入手する、自分で3DCGや3DCADで作る、3Dスキャンで形を取る、の3ルートです。
どれを選んでも出力前の調整は必要ですが、最初の1体という観点では負担の重さが違います。
FLASHFORGEのフィギュア向け解説やFabmartの制作フローでも、この3パターンが基本線として整理されています。
まず把握しておきたいのは、「データを手に入れた」と「そのまま出力できる」は別という点です。
特にフィギュアは髪先、指先、装飾、フリルの奥まった面など、造形エラーの種が多く、どのルートでも最終的には出力向けの見直しが入ります。
初心者が一体を完成まで持っていくなら、最短距離になりやすいのは既成データです。
自由度は下がりますが、造形テストと後処理の感覚を先に覚えられるからです。
| ルート | 始めやすさ | 自由度 | 必要スキル | 出力前調整 | 初心者への向き |
|---|---|---|---|---|---|
| 既成データを使う | 高い | 低〜中 | 低い | 必要 | 最も向く |
| 自分でモデリングする | 低〜中 | 高い | 高い | 必要 | 慣れてから |
| 3Dスキャンする | 中 | 元形状依存 | 中 | 必要 | 特殊用途向き |
既成データの入手は、最初の一歩としてもっとも現実的です。
STL配布や販売データはすでに三角形メッシュになっているため、スライサーへ渡すまでが早く、造形方向やサポート配置の勉強に集中できます。
ただし配布データの品質は一定ではありません。
筆者の経験では、既成STLは一見きれいでも“穴あき”や内側のゴミポリゴンが残っていることがあります。
そのため、修復ソフトで一度自動修正を通し、そのあとに目視確認を挟む流れを毎回入れています。
自動修正だけで安心すると、髪束の付け根や服の裏で破綻が残ることがあるからです。
自作モデリングは、表情差分やポーズ変更、パーツ分割まで自分の意図で設計できるのが強みです。
ZBrush系の3DCGは有機的なキャラクター造形と相性が良く、Fusion系の3DCADは台座や関節、治具のような寸法管理に向きます。
フィギュア本体を3DCG、接続ダボや展示ベースを3DCADで作る組み合わせも定番です。
デザイン変更の自由は大きい一方で、最初から「出力できる形」にする視点が必要になるので、造形経験が浅い段階では学ぶことが一気に増えます。
3Dスキャンは、既存立体を取り込んでベースにしたい場面で役立ちます。
粘土原型のラフ形状を取り込んでデジタルで整えたり、自分で作った小物形状を複製前提で扱ったりするときには有効です。
ただ、スキャン直後のデータはノイズ、穴、不要面が多く、表面もそのままでは荒れがちです。
キャラクターフィギュアを最初からスキャン主体で仕上げるより、補助ルートとして考えたほうが工程は安定します。
データ調達では、著作権とライセンスも作業の一部として扱う必要があります。
既存キャラクター、ゲーム、アニメ、イラストを元にした3Dデータは、私的利用の範囲を越えると複製や翻案の問題に触れます。
販売可、非商用のみ、改変可否、再配布禁止といった条件はデータごとに違うので、そこを飛ばすと後工程が成立しません。
特に3Dスキャンも「実物を取り込んだだけ」では自由素材にならず、元の権利関係を引き継ぐ前提で見たほうが混乱がありません。
対応ファイル形式と修復ポイント
フィギュア制作でよく触るファイル形式は、STL、OBJ、3MFの3つです。
どれもスライサーで見かけますが、持てる情報が違います。
ここを把握しておくと、読み込み時の縮尺ズレや色情報の消失で慌てずに済みます。
STLは3Dプリントで最も広く使われる定番形式で、三角形メッシュだけを持つシンプルな構造です。
多くのスライサーが素直に読める反面、標準仕様では色やテクスチャを持たず、単位情報も保持しません。
つまり、見た目は同じでもソフト間でサイズ解釈がずれることがあります。
既成データで最もよく配られているのもSTLなので、初心者が最初に触る形式としてはこれが中心になります。
OBJは頂点位置に加えて法線やUV、マテリアル参照も扱える形式です。
マテリアル情報は外部のMTLファイルで管理する仕組みなので、OBJだけ渡されると色や質感の情報が欠けることがあります。
造形用としてはメッシュ本体を扱えますが、ファイルが複数に分かれやすく、受け渡しで欠落が起こりやすい点は気をつけたいところです。
キャラクターモデルを3DCGソフトから受け取るときはOBJで来ることも多いです。
3MFは、『3MF Consortium』が仕様を公開している3D製造向けフォーマットで、ユニット情報、カラー、材料、アセンブリ情報などを1ファイルにまとめられます。
STLより情報量が多く、受け渡し時の取り違えを減らしやすいのが利点です。
複数パーツ構成の管理にも向いていて、最近のスライサーでは3MF保存が実用的な場面が増えています。
| 形式 | 主な特徴 | 保持できる情報 | フィギュア用途での扱い |
|---|---|---|---|
| STL | 三角形メッシュ中心の定番形式 | ジオメトリのみ | 配布データで最も多い。単位情報がない点に注意 |
| OBJ | テキストベースで法線やUVも扱える | ジオメトリ、法線、UV、MTL参照 | 3DCG由来データで見かける。補助ファイル欠落に注意 |
| 3MF | 3D製造向けの高機能形式 | ジオメトリ、ユニット、カラー、材料、構成情報 | 複数パーツ管理と受け渡しで有利 |
形式より先に大事なのが、そのメッシュが閉じた立体として成立しているかです。
スライス前の修復ポイントは、穴埋め、法線の向き、非多様体の修正が基本になります。
穴が空いたままだと中身と外側の区別が崩れ、スライサー側で意図しない面が張られます。
法線が反転していると、外側のはずの面が内側扱いになり、表示や中空化で破綻します。
非多様体は、1本の辺に複数面が重なっていたり、厚みゼロの交差が起きていたりする状態で、これも出力事故の原因になります。
筆者は、修復ソフトの自動修正機能をまず使いますが、それで終わらせません。
自動処理は穴埋めには強い一方で、意図したすき間まで塞いだり、髪の毛の裏に薄い膜を作ったりすることがあります。
そこで、面の表示を切り替えて内部をのぞき、不要な内壁や浮遊ポリゴンが消えているかを見ます。
特にスキャン由来データと既成STLは、外から見えない位置にゴミ面が残りやすく、ここを一度見ておくとスライサー上での謎の島が減ります。
SOLIDWORKS for Makersでも、造形前のメッシュ修復と厚みチェックは前工程として扱われています。
フィギュアではこの段階の10分が、後で数時間分の再出力や研磨に跳ね返ることが多いです。
見た目が完成していても、出力用データとしてはまだ未完成、という感覚で扱うと作業が安定します。
Specification – 3MF Consortium
3mf.io薄肉・分割・造形不可形状の見直し
フィギュア用データの調整で、もっとも失敗につながりやすいのが薄肉と造形不可形状です。
『Wacomの3Dフィギュア解説』では、樹脂フィギュア出力の最低肉厚は0.5mm、理想は1mm以上と整理されています。
髪先、袖口、リボン、指、アクセサリーの輪などは、画面上で成立していても出力物としては弱すぎることがあります。
筆者は小型フィギュアの細部を見るとき、先端を“見た目優先の線”ではなく“持てる厚みのある板や棒”として捉え直すようにしています。
造形後に触れた瞬間に欠ける形は、データ段階で少し丸めて厚みを足したほうが結果がきれいです。
FDMでは薄肉の見方が少し変わります。
前のセクションで触れた通り、一般的なノズル径は0.4mmで、ブリッジ性や積層方向の影響も受けます。
つまり、単純に肉厚だけでなく「どの向きで積まれるか」「空中に渡る部分がどれだけあるか」まで含めて判断する必要があります。
マントの裾や髪の跳ね先のような横に張り出す部位は、厚みがあっても支え方が悪いと崩れます。
光造形では面として出ても、FDMでは線の連続として厳しい、という箇所が出てきます。
見直し対象になりやすい形状は共通しています。
パーツ本体から接続していない浮いたパーツ、面だけあって立体になっていない厚みゼロの板、触ると欠けやすい鋭利すぎるエッジは、画面映えはしても造形向きではありません。
髪の先端は刃のように尖らせるより、先端1点だけほんの少し丸めたほうが出力も研磨も安定します。
アクセサリーの輪も、完全な細線より断面に厚みを持たせたほうが洗浄時に残ります。
TIP
データを修正するときは、シルエットを壊さない範囲で「先端を丸める」「根元を太らせる」「奥の見えない面を少し埋める」の3方向で考えると判断が早くなります。
画面上の印象を大きく変えずに、出力成功率だけを上げやすい調整です。
分割ラインの考え方もフィギュアでは欠かせません。
髪、腕、武器、背中の装飾、台座から大きく張り出すパーツは、一体出力より分割したほうが表面を守れることがあります。
たとえば髪は、前髪と後頭部で分けると顔まわりのサポート跡を避けやすくなります。
腕は胴体から少し離して別パーツにすると、脇の内側や袖の裏へ無理なサポートを入れずに済みます。
アクセサリーは細い支柱のまま本体と一緒に出すより、別体で角度を最適化したほうが欠損が減ります。
分割位置は「組み立てやすい場所」より、「継ぎ目を隠せる場所」で考えると仕上がりが整います。
髪束の境目、服の縫い目、袖口の段差、装飾の重なり、ベルトの裏など、もともと形の切れ目がある場所はラインを飲み込みやすいです。
逆に頬や太もものような広い曲面の中央で分けると、後で合わせ目消しの手間が増えます。
デジタル段階で分割を仕込めるのは、ガレージキット的な考え方と相性が良い部分です。
この工程では、見た目の完成度よりも出力・洗浄・サポート除去・組み立てまで通るかを優先して形を整えます。
最初にここを丁寧に詰めたデータは、出力後の作業が静かに進みます。
逆にデータが華奢なまま出すと、プリントが成功しても、洗浄中に折れる、サポート除去で欠ける、接着時に位置が出ない、と問題が連鎖します。
フィギュア制作での「原型作り」は、モデリングの見栄えだけで終わらず、出力工程を通る立体へ変換するところまで含まれています。
工程2 — スライス設定と出力のコツ
共通の基本設定
スライサー設定は、造形方式が違っても見る順番を固定すると崩れません。
筆者はフィギュアを置いたら、積層ピッチ、向き、サポート、分割、中空化の5項目をこの順で詰めます。
先に細かな数値を触るより、立体の置き方と支え方を決めたほうが、表面と成功率の両方が読みやすくなるからです。
-
積層ピッチを先に決める
小型フィギュアでは、顔、髪、衣装のしわのように「曲面がどれだけ段差に見えるか」が見た目を左右します。
積層ピッチはその基準になるので、まずここを固めます。
SOLIDWORKS for Makersでもフィギュア用途では細かめの積層が前提として扱われていて、段差を抑えたい面をどこに置くかとセットで考える流れが自然です。
数値そのものも大切ですが、どの面にその段差が出るかまで見ておくと、同じ設定でも印象が変わります。 -
造形方向(向き)は“正面映え”より“痕をどこへ逃がすか”で決める
初心者のうちは正面をきれいに見せたくて、真正面を上に向けた置き方を選びがちです。
ただ、フィギュアの向きは、積層痕やサポート痕を目立つ面から外すためのものです。
顔、胸元、太ももの前面のような広くて視線が集まる面は、できるだけ痕が集まらない向きに逃がします。
髪の裏、背中、台座の底、衣装の内側のように後処理で触りやすい場所へ負担を寄せると、仕上げの手数が減ります。 -
サポートは“支える量”ではなく“痕を残す場所”で考える
サポートが少なすぎると失敗しますが、多すぎても表面を荒らします。
フィギュアでは特に、顔まわり、前髪の先、指先、フリルの縁に重いサポートを置くと、造形後に削っても痕が残りやすくなります。
小型フィギュアの細部は、先端径を小さめにした軽いサポートで拾ったほうがまとまりやすいです。
筆者も髪先や指先は「折れない範囲で最小限」に寄せることが多く、ここで強く支えすぎると、造形中より除去後の表面修正のほうが大仕事になります。 -
パーツ分割は“出力できるか”と“消せる継ぎ目か”の両方で判断する
一体で置けるモデルでも、分けたほうが結果が整うことがあります。
たとえば腕を胴体から離す、前髪を別にする、武器を独立させるだけで、サポートを裏面へ逃がしやすくなります。
分割位置は、髪束の境目、服の段差、ベルト下、袖口の切り替えなど、もともと線がある場所に置くと後処理が軽くなります。
広い頬や脚の中央で分けると、合わせ目処理が表面そのものの修正に変わってしまいます。 -
中空化は軽量化だけでなく、洗浄と排液まで含めて設計する
フィギュアを中空化すると材料は節約できますし、サイズ次第では重量バランスも整います。
Wacomの解説では樹脂フィギュアの最低肉厚は0.5mm、理想は1mm以上とされていて、薄くしすぎると造形後の取り回しで破損が出ます。
さらに見落とされやすいのが排液穴です。
穴の位置が悪いと内部に未硬化レジンや洗浄液が残り、後からトラブルになります。
筆者も以前、見た目を優先して排液穴を小さくケチった結果、洗浄が抜け切らず、内部がベタついたまま残って、しばらくしてから割れたことがあります。
その経験以降、穴は見えにくい底面に大きめに取るほうが結局安全だと考えるようになりました。
底面や接地面の裏なら、見た目への影響を抑えながら排液経路を確保できます。
FDMでの見た目改善テク
FDMは積層痕が出る方式ですが、荒く見える原因はZ方向の段差だけではありません。
ここが誤解されやすいところで、FDMはXYとZの両方が見た目を決めます。
前のセクションでも触れた通り、一般的な0.4mmノズルではXY精度の目安が±0.1〜0.3mm程度あります。
つまり、側面の輪郭、顔の小さな凹凸、髪束の分離感は平面方向の表現にも左右されますし、曲面の階段感はZ方向で決まります。
フィギュアの表面を整えたいなら、どちらか片方だけ見ても足りません。
積層ピッチは、目立つ面をどこに置くかとセットで考えると効きます。
顔や脚のように大きな曲面が正面に来るなら、Z方向の段差を抑えるために0.1〜0.15mmの設定が基準になります。
ここで向きが悪いと、どれだけ積層を細かくしても、胸元や頬に階段が並びます。
逆に、目立つ面を縦方向に逃がせれば、同じ積層ピッチでも「見た目の荒れ」が減って見えます。
FDMでは設定値より向きの優先度が高い場面が多い、というのが筆者の実感です。
輪郭の出方にも注目したいところです。
たとえば耳、鼻先、指先、髪先のような小さな突出は、XY側の表現限界が先に出ます。
そこで、正面に見せたい繊細なディテールを無理に横へ張り出させるより、少し上方向へ逃がす置き方のほうが線が残ります。
フィギュアのポーズを変えられない場合でも、本体を少し傾けるだけで、輪郭の欠け方が変わることがあります。
壁厚とインフィルの考え方も、見た目に地味に効きます。
小型フィギュアでは内部をぎっしり詰めるより、外周の安定感を優先したほうが表面が落ち着くことがあります。
インフィルは形を支える役目、壁は外見そのものを作る役目です。
表面のヒケや頼りなさが気になる個所は、充填率だけを上げるより外壁側を意識したほうが整います。
Formlabsの比較例でも、Bambu Lab X1にPLA Basic、積層ピッチ120μm、充填率15%という条件が使われていて、FDMでは細かい積層設定と適度な内部充填の組み合わせが現実的な落としどころになっています。
小型フィギュア特有の注意として、細いパーツに重いサポートを付けすぎないことも挙げられます。
FDMのサポートは剥がすときに力がかかるので、指や髪先のような華奢な部位に密集させると、造形後にそこで負けます。
筆者はこういう箇所では、全部をきれいに支えようとせず、見える面を守るほうを優先します。
少し荒れても研磨で拾える場所と、欠けたら復旧に時間がかかる場所を分けて考えると判断がぶれません。
TIP
FDMで迷ったときは、頬、胸元、脚前面のような広い曲面が「どちらの方向の段差を拾うか」を先に見ます。
Zの階段が出るのか、XYの輪郭つぶれが出るのかを見分けると、積層ピッチを詰めるべきか、向きを変えるべきかが決まります。
光造形での痕・排液対策
光造形は表面がきれいに見えますが、設定で失敗しやすい場所ははっきりしています。
ひとつはサポート痕、もうひとつは中空時の排液設計です。
ここを詰めずに出すと、出力自体は成功しても、洗浄後と仕上げ後で差が出ます。
Formlabsが公開している比較では、Form 4とGreyレジンで積層ピッチ100μmの例が使われていて、層の細かさそのものは十分高精細です。
それでも、フィギュアの出来を決めるのは、どこに支えを置き、内部の液をどう抜くかという設計側の判断です。
サポート痕は、正面から見える位置に置かないだけで印象が変わります。
顔の正面、胸、太もも、装飾の表側ではなく、髪の裏、背中、台座の裏、衣装の陰になる面へ逃がすのが基本です。
特に頬や額は、軽い痕でもサーフェイサー後に拾いやすいので避けたい場所です。
小型フィギュアの指、髪先、まつ毛まわりのような細部では、サポート先端径を小さめにして、点で軽く支える発想が合います。
密度を上げて面で固めると、除去後に表面そのものが荒れてしまいます。
薄いパーツは、支えれば支えるほど安全というわけではありません。
たとえばフリルの端、髪の房、リボンの先にサポートを詰め込みすぎると、造形中は安定しても、取り外し時に局所へ力が集まります。
筆者は薄いパーツほど、数を増やすより接点の位置を吟味します。
先端を全部拾うより、根元と荷重がかかる位置を押さえたほうが、外した後の面がきれいに残ります。
中空化した光造形パーツでは、排液経路が通っているかを必ず立体で見ます。
穴が一応あるだけでは不十分で、内部の洗浄液と未硬化レジンが重力で抜ける道になっていないと残留します。
底面に穴を設けるのは見た目のためだけでなく、洗浄時に内部の液だまりを減らすためでもあります。
見えない位置に穴を置くなら、ただ隠すのではなく、流れが曲がらずに抜ける位置に置くのがコツです。
台座接地面の裏、足裏、差し込みダボで隠れる面は使いどころが多いです。
肉厚も無視できません。
前工程で触れたように、樹脂フィギュアは最低0.5mm、理想は1mm以上という考え方がベースにあります。
薄い殻のまま中空化すると、洗浄や二次硬化の途中で歪みや割れにつながります。
材料節約を優先しすぎると、再出力のほうが高くつく場面が出ます。
フィギュアでは中空化そのものより、「表面を保ちながら内部を無理なく抜ける構造にする」ほうが結果に直結します。
光造形は積層の細かさで期待値が上がるぶん、痕と排液の設計が甘いと落差が出ます。
『Formlabs:miniatures and figurines guide』でも、小型フィギュアではサポート配置と向きが仕上がりを左右する前提で話が進んでいます。
出力画面で見えている成功と、洗浄後に手元へ残る成功は別物で、その差がもっとも出るのがこの工程です。
3D Printing Miniatures and Custom Figurines: A Guide to Bringing Digital Models to Life
Find the best 3D printer for miniatures and custom figurines, learn how to 3D print miniatures, finish 3D printed figuri
formlabs.com工程3 — 後処理:サポート除去、洗浄、二次硬化、研磨
FDM後処理の手順
FDMの後処理は、出力直後の「積層された樹脂の塊」から、原型らしい面へ寄せていく工程です。
流れとしては、まずサポートを外し、その後に積層痕を削り、必要なら小さな凹みを埋めます。
ここで急いで表面全体を一気に整えようとすると、角が丸くなったり、逆に立ってほしいエッジが欠けたりします。
フィギュアでは頬のふくらみ、脚の前面、衣装の面のつながりが見た目を左右するので、削る量よりも「どの面を残すか」の意識が先です。
サポート除去は、いきなり根元からもぎ取らないほうが無難です。
筆者は面に触れている接点を全部きれいに落とそうとせず、まずサポートの大きい部分だけ切り離し、接地面に近い根元を少し残しておきます。
そのほうが表面側を引っぱらずに済み、あとで残った根元だけを小さく処理できます。
実際、このやり方に変えてから、衣装の平面や髪の外側に深いえぐれを作る失敗が減りました。
サポートは一気に取るより、面を守りながら段階的に外したほうが痕が浅く収まります。
積層痕の処理は、粗い番手から順に段差をならしていきます。
最初に220番か320番相当で大きな筋を落とし、その後に400番、600番へ上げる流れが扱いやすいです。
Formlabsの下地・塗装ガイドでも、粗研磨から細かい番手へ移る考え方が共通しています。
FDMの積層痕は、最初から細かいペーパーだけで触っても山が残りやすく、磨いているのに平らにならないことがあります。
反対に、粗い番手を長く当てすぎると面そのものを削り替えてしまうので、段差が消えたらすぐ次へ移るほうが形を守れます。
角やエッジは、平面と同じ力で往復させないことがコツです。
肩当ての縁、ブーツの折り返し、髪束の稜線のように「立っていてほしい線」は、ペーパーを面に寝かせすぎると一瞬で丸くなります。
筆者はこういう箇所では、角そのものを削るのではなく、角の両側を少しずつ均して線を浮かせる感覚で触ります。
エッジ欠けが起きやすい場所でもあるので、出っ張りを落とす意識より、周囲の高さをそろえる意識のほうが破綻しません。
段差が深い場所や、サポート跡が点ではなく面で荒れた場所は、研磨だけで追い込まずパテ埋めを挟んだほうが早いです。
特に肌面や広い布面は、削って合わせるより埋めてから整えたほうが元の面を保ちやすく、サーフェイサーを吹いたあとに筋が戻ることも減ります。
FDMは直出しの時点で試作感が残りやすい方式ですが、後処理の密度を上げると印象が変わるのはこの段階です。
細い指、髪先、アンテナ状の装飾は、先端をつまんで作業すると折る方向に力が逃げます。
持つなら根元側を支え、削るときも「先端を押さえる」のではなく「根元で受ける」ほうが安全です。
前工程でも触れたように、細部は出力時点で無理をさせないことが前提ですが、後処理ではその弱さを前提に手を動かす必要があります。
最低肉厚が0.5mm、理想は1mm以上というWacomの目安を思い出すと、華奢な部位ほど面で持たず、軸を支える意味が実感しやすいはずです。
{{product:4}}
光造形後処理の手順
光造形は直後の見た目がきれいなぶん、順番を崩すと後で一気に崩れます。
基本は、造形直後に洗浄し、十分に乾かし、そのあとでUVによる二次硬化を行い、サポート除去と研磨へ進みます。
ここは順番そのものに意味があります。
表面に未硬化レジンが残ったまま硬化を先に進めると、ぬめりやベタつきが封じ込められ、サポート痕の処理も荒れやすくなります。
洗浄には、通常レジンならIPA、水洗い対応レジンならその製品で指定された溶媒を使います。
IPAは無色で揮発が早く、光造形後処理で広く使われている溶媒です。
前述の通り可燃性の管理は前提ですが、造形直後の未硬化レジンを切る力は高く、表面のぬめりを落とす段階では扱いやすい部類です。
水洗い対応レジンでも、洗ったあとに水分が残ったまま次工程へ進むと白濁や変形の原因になります。
ここで乾燥を挟む理由は、硬化の均一さと形状維持のためです。
乾燥後のUV二次硬化では、表面だけでなく全体を均一に固めて、後工程で触っても負けない状態へ持っていきます。
京セラのUV LED解説でも、レジンは光重合開始剤の吸収波長に合わせて硬化が進む前提で整理されています。
実作業の感覚でも、硬化前は少ししなる細い部位が残りますが、二次硬化後は同じ部位でも粘りより硬さが前に出ます。
筆者はこの差を、髪先や細い武器で何度も体感しました。
硬化前は指先でそっと逃がせる感じがあり、硬化後は形が決まるぶん、曲げると戻るより先に割れる方向へ行きます。
だからこそ、細い部位にサポートが多い造形では、どの段階でどこを持つかが仕上がりに直結します。
二次硬化のあとにサポートを外すと、接点が見えやすくなり、残す場所と落とす場所の判断がつきやすくなります。
ここでもFDMと同じく、面を守る考え方が効きます。
筆者は光造形でも、サポートを根元から一気に切り飛ばすより、まず枝を落として接点近くを小さく残し、最後にその根元だけを処理します。
このほうが表面の皮一枚を持っていかれにくく、頬や太もも、衣装の表側の痕が浅く収まります。
特に光造形の表面は最初から滑らかなので、深いサポート痕をひとつ作るほうが、細かな積層差より目立ちます。
サポート除去後の研磨は、痕の周囲から少しずつ均していきます。
220番や320番を広く当てるというより、必要な場所だけに使って高さを合わせ、400番、600番で面を戻す流れが安定します。
点状の痕を消そうとして広い面まで削ると、せっかくの光造形らしい滑らかさを自分で崩してしまいます。
痕の中心だけを見るのではなく、そのまわりの面とつながるかで判断すると、削りすぎを防げます。
TIP
光造形の細い部位は、指先でつまむより根元を支えて道具を動かしたほうが残ります。髪先やアンテナは「どこを切るか」より「どこで受けるか」で生存率が変わります。
換気、手袋、保護メガネはこの工程では省けません。
UVライトは直視せず、洗浄液は密閉して保管し、廃棄は自治体ルールに沿って処理します。
ここは気持ちの問題ではなく、レジンと溶媒を扱う作業そのものの前提です。
{{product:4}}
共通の研磨・痕消しテクニック
FDMと光造形で前工程は違っても、見栄えを整えるときの考え方には共通点があります。
ひとつは、傷を消すのではなく、面を戻す意識で削ることです。
もうひとつは、粗い番手で形を作り、細かい番手で傷を消す役割分担を崩さないことです。
220番や320番で段差や痕の高さを落とし、400番、600番で表面を整える流れは、どちらの方式でも再現性があります。
サポート痕は、いきなり痕の中心だけを深く追うと、クレーターのような凹みになります。
先に痕の周囲を少しだけならし、面の中で浮いている部分を落としてから中心へ寄ると、面を崩さずに済みます。
筆者は特に顔や脚のような広い曲面では、小面積から触って様子を見るようにしています。
最初の数ストロークで輪郭が変わる場所だからです。
少し削って確認し、また少し削るほうが、修正のきく範囲に収まります。
平面、曲面、エッジで手の当て方を変えるのも効果的です。
平面は当て木や硬めの当たりを意識すると波打ちにくく、曲面は指腹でペーパーを沿わせたほうが元の丸みを拾えます。
エッジは線そのものをこするのではなく、周辺を整えて立たせる感覚が向いています。
これを意識するだけで、服の折り目がだれた印象になったり、髪束の線が鈍る失敗が減ります。
壊れやすい部位では、「削る手」と「支える手」の役割をはっきり分けると事故が減ります。
細い指や髪先を空中で持ったまま研磨すると、削る力がそのまま根元へ入ります。
支える手で軸を受け、削る手は最小限だけ動かすと、必要な場所だけを触れます。
特に光造形の二次硬化後は、しなりが減って硬さが前に出るので、少しの横力でも割れに直結します。
FDMでも薄い先端は積層方向に沿って欠けることがあり、持ち方の差がそのまま残存率になります。
研磨の途中で表面が均一に見えても、痕が残っていることがあります。
そういうときは、番手を上げる前に一度全体の反射を見て、傷の向きがそろっているかを確認すると判断しやすくなります。
粗い傷が残ったまま400番や600番へ進むと、後でサーフェイサーを入れたときに筋だけ浮いてきます。
逆に、粗い番手を必要以上に続けると面が痩せます。
作業の成否は「よく削れたか」ではなく、「元の面に戻せたか」で決まります。
工程4 — サーフェイサーと塗装で3Dプリント感を消す
塗装に入る前のサーフェイサーは、単に「色を付ける前の一手間」ではありません。
ここでやっているのは、研磨で残った傷と面の乱れを見える化しつつ、本塗装がきちんと食いつく土台を作る作業です。
特に3Dプリント品は、削ったつもりでも積層の谷やサポート痕がまだ残っていることが多く、素地のままでは判断を誤りがちです。
サーフェイサーを一度かけると、見えていなかった線傷やわずかな段差が急に浮いてきます。
ここで見つけた粗を拾っておくと、塗装後に「光を当てたら筋が見える」という失敗を避けやすくなります。
模型用のサーフェイサーは、一般名詞で言えば1000番相当のような細かめから、傷埋め寄りのやや厚めまであります。
筆者は積層痕を落ち着かせたい場面で、1000番相当を薄く3回重ねたあたりから「段差が消える目安」が見えてきます。
1回で隠そうとすると表面だけが膨れて、エッジが眠くなります。
薄く吹いて乾かし、表面を見て、必要ならもう一度という往復のほうが面が崩れません。
このとき焦って次の塗膜を重ねず、乾燥をしっかり取ったほうが、あとで色を乗せたときの艶が安定します。
見た目が乾いていても内部が落ち着いていない状態で進めると、トップコートで微妙に艶が揺れることがあります。
下地色の選び方でも仕上がりは変わります。
グレーは最も基準にしやすく、傷の見え方と色の乗りのバランスが取りやすいので、初回の1本として扱いやすい立ち位置です。
ブラックは金属色や暗色を締めたいとき、陰影を深く見せたいときに向きます。
影側が先に決まるので、メカ系や黒立ち上げ寄りの塗り方と相性が良いです。
ホワイトは肌色やパステル、明るい赤や黄色の発色を優先したいときに効きます。
淡い色を濁らせたくないフィギュアでは、下地がそのまま透明感に響きます。
逆に、傷や面の荒れはホワイトで飛びやすいので、粗探しの段階ではグレー、発色重視の本番下地ではホワイトという使い分けも成り立ちます。
FDMとレジンで変わる下地作り
FDMは積層の段差そのものが表面情報として強く残るので、下地は少し厚みを持たせて、研磨と往復しながら整える流れが合います。
前工程で触れた通り、線状の痕が残りやすい方式なので、サーフェイサーを吹いたあとに面がつながって見えるかを重視します。
厚めに入れて削り、また薄く入れて確認する、という反復で「積層の段差を埋める工程」と「面を戻す工程」を分けると崩れにくいです。
丸い頬や脚のような大きい曲面では、この往復を一回挟むだけで試作っぽさが抜けます。
光造形のレジン出力は、もともとの表面が滑らかなので、FDMと同じ感覚で厚く下地を盛ると精細感を自分で埋めてしまいます。
まぶたの段差、髪束のエッジ、布の薄い起伏は、厚い下地で一気に鈍ります。
レジンではサポート痕の点処理を先に終わらせ、サーフェイサーは薄めを数回に分けて、必要な場所だけを見るほうが整います。
全面を埋める発想ではなく、「傷を拾うための膜」として扱うと、せっかくの細部が残ります。
筆塗りとエアブラシの向き不向き
本塗装はエアブラシが前提だと思われがちですが、初回は筆塗りでも成立します。
小型フィギュアで色数を絞るなら、筆で丁寧に境界を置いていくだけでも十分に完成まで持っていけます。
特に服、靴、小物の塗り分けは、むしろ筆のほうが狙った場所へ置きやすい場面があります。
道具を一度に増やしすぎないという意味でも、筆塗りスタートには現実味があります。
ただ、下地の均一化やグラデーション、広い面のムラ抑えまで含めると、エアブラシの強さが出ます。
サーフェイサーを薄く均一に重ねる工程は、筆だと塗膜の厚みが局所的に偏りやすく、毛目も出ます。
エアブラシは0.3mm前後の汎用口径が定番で、面全体に霧をかけるように塗れるので、フィギュアの肌や髪のベース、スケール感を壊したくない陰影表現に向いています。
『Formlabsの3Dプリント品の下地・塗装ガイド』でも、表面品質を仕上げる工程で下地の均一さが塗装結果を左右する流れが整理されています。
筆者の実感でも、筆塗りは「色を置く力」が強く、エアブラシは「膜をそろえる力」が強いです。
どちらが上というより、役割が違います。
How to Prime and Paint 3D Printed Parts (With Video)
Learn how to paint 3D printed models and achieve a glossy, smooth finish to transform your part from a simple 3D print i
formlabs.com塗装からトップコートまでの流れ
流れとしては、下地処理を終えたらサーフェイサー、必要なら再研磨、ベースカラー、本塗装、細部の塗り分け、デカールや墨入れなどの追加表現、そしてトップコートです。
どの段階でも共通するのは、一度で仕上げようとせず薄く重ねることです。
塗膜を一気に作ると、凹部に溜まり、モールドが浅く見えます。
薄吹きを重ねると色も艶も安定し、乾燥ムラによるざらつきも抑えやすくなります。
トップコートの艶選びも、造形の印象を大きく変えます。
光沢はエナメル質や金属感、濡れたような情報量を出したいときに向きます。
半光沢は質感の主張が強すぎず、肌・服・装備の中間をまとめやすい立ち位置です。
つや消しは最もフィギュアらしい落ち着きが出ますが、金属や革まで全部消すと素材感が平坦になります。
顔は半光沢寄り、布はつや消し、ブーツや装飾は光沢寄りというように、部位で分けると立体感が保てます。
乾燥時間は製品ごとの指定に従うのが前提ですが、作業感覚としては「指で触れられる状態」と「次の塗膜を安定して受ける状態」は別です。
特にサーフェイサーとトップコートの間は、表面だけで判断しないほうが仕上がりが安定します。
筆者はここを急がず、一段落ごとにしっかり乾燥させた日のほうが、艶のムラや白っぽい曇りが出にくいと感じています。
フィギュアの塗装は色を塗る工程というより、薄い膜を順番に積み上げて質感を作る工程だと捉えると、3Dプリント特有の“作った感”が抜けていきます。
初心者が失敗しやすいポイントと対処法
初回でつまずきやすいのは、プリンター本体の性能よりも「形状の作り方」と「後処理の詰め」が甘いケースです。
特に光造形は、出力直後の見た目がきれいなので、成功したように見えて実は内部に火種を残していることがあります。
ここが初心者の落とし穴です。
逆に言えば、失敗の定番を先に知っておくと、最初の一体はぐっと安定します。
薄すぎるパーツは見栄えより先に成立性を見る
光造形のフィギュアで折れやすいのは、髪先、リボン端、指、爪先、フリルの縁のような細く伸びた部分です。
肉厚は最低でも0.5mm、理想は1mm以上をひとつの目安にすると、出力後の扱いが急に現実的になります。
Wacomの解説でもこのあたりの厚みは基準として整理されています。
見た目を優先して薄く削り込みすぎると、出力の段階では通っても、洗浄・サポート除去・二次硬化のどこかで欠けます。
筆者は、細い髪束や衣装の先端が不安なとき、単純に太らせるだけでなく、裏側に補強リブを入れる、目立たない位置だけ厚みを足す、造形方向を変えて荷重のかかり方を変える、という3方向で調整しています。
特に向き変更は効きます。
先端が宙に長く突き出る姿勢より、根元から支えられる姿勢のほうが、同じ形でも生存率が上がります。
サポートを増やしすぎると面が荒れる
初心者ほど「支えが多いほど安全」と考えがちですが、過剰サポートは別の失敗を呼びます。
接点が増えるぶん、肌や頬、太もも、髪の外側といった見せたい面が荒れやすくなるからです。
光造形では、必要な場所に軽量サポートを置いて、配置で支える発想のほうが仕上がりが整います。
面の裏や陰になる位置に寄せて、正面から見える側をなるべく空けるだけでも、後処理の手間が変わります。
サポート痕が残ったときは、いきなり深く削らず、まず400番で当ててから600番で均す流れが扱いやすいです。
点でえぐれた場所だけは、サーフェイサーで埋まらないこともあるので、パテを本当に少量だけ点付けして戻すと面がつながります。
ここで周囲まで広く削ると、せっかくの輪郭が痩せます。
傷だけを消す意識で十分です。
洗浄不足と未硬化は、あとから壊れる原因になる
光造形でいちばん厄介なのは、出力直後ではなく数日後に問題が出るタイプの失敗です。
洗浄不足のまま進めると、表面のベタつき、局所的な脆さ、わずかな変形が起きます。
しかも見た目だけでは判断しにくいので、塗装まで進めてから発覚しがちです。
筆者も初期に、爪先だけ妙に柔らかい出力品を触って「薄いからこんなものか」と見逃しかけたことがあります。
あのときは再洗浄して、しっかり乾かしてからもう一度UVで二次硬化したら、触感が締まって回復しました。
一方で、内部に洗浄液が回りきっていない中空パーツは別でした。
外側は硬く見えていたのに、あとからひびが入り、最終的に割れました。
表面の柔らかさは救えても、内部未洗浄は後から破綻する。
この差は一度経験すると忘れません。
洗浄液は汚れるほど落ちが鈍るので、同じ液を長く使い続けると失敗率が上がります。
前述の通り、洗浄そのものだけで終わりではなく、十分に乾燥させてからUV二次硬化に進む順番まで含めて後処理です。
水洗い対応レジンでも事情は同じで、SK本舗の解説でも乾燥不足のまま硬化すると変形や白濁につながる流れが整理されています。
外だけきれいに見えても、内部と凹部が処理し切れていないと後で崩れます。
NOTE
光造形で「表面はきれいなのに触ると少し頼りない」と感じたら、造形失敗ではなく洗浄不足や乾燥不足が残っていることがあります。
薄いパーツの問題と決めつけず、後処理の工程を疑うほうが復旧につながります。
FDMはレイヤーラインを消す前提で向きを決める
FDMで初心者が戸惑うのは、造形自体は成功しているのに、顔や脚の曲面が思ったより“段々”に見えることです。
これは故障ではなく方式の性格です。
見せたい面をきれいにしたいなら、積層ピッチだけでなく向きの設計が効きます。
目立つ面はできるだけ段差が流れる向きに置き、あとから研磨しやすい場所にラインを逃がします。
設定面では、見た目を優先するなら0.1〜0.15mmあたりがひとつの基準になります。
SOLIDWORKS for Makersでもこの帯域は見栄え改善の目安として扱われています。
ただし、設定を細かくしただけではレイヤーラインは消えません。
実作業では、サーフェイサーを吹いて段差を浮かせ、研磨して、もう一度確認する反復が必要です。
FDMは「出力時に完成」ではなく、「出力後に面を作る」方式だと考えたほうが仕上がりのイメージが合います。
小さい別パーツは最初から後付け前提にする
アンテナ、房飾り、細い武器、指先だけで支える装飾などは、一体出しにこだわるほど破損しやすくなります。
特に箱詰めや持ち運びまで考えると、完成直後は無事でも、あとで欠けることが珍しくありません。
こういう場所は、はじめから分割して別パーツ化し、後付け接着するほうがトータルでは安定します。
初心者ほど「パーツ数を減らしたい」と考えますが、壊れやすい一体物を救済する補修のほうが手間が大きくなりがちです。
筆者は、細い装飾が左右に張り出す形状では、見た目より輸送を優先して分けることが増えました。
完成後に動かす予定があるなら、スポンジで個別に包んで収納するだけでも事故が減ります。
展示物としては小さくても、荷重のかかり方は想像以上に厳しいです。
法的に触れてはいけない造形もある
3Dプリントは作れる範囲が広いぶん、造形そのものが問題になるケースにも目を向ける必要があります。
既存キャラクターや立体物を無断で複製・販売する行為は、著作権や商標の侵害につながります。
私的利用のつもりでも、配布や委託、販売が絡むと扱いは大きく変わります。
形状によっては、法律上の注意点も変わります。
刀剣類に著しく似たものを持ち歩く行為は銃刀法の文脈で問題化し得ますし、食品に触れる器具や容器として3Dプリント品を使う話には食品衛生法の観点があります。
家庭用プリントだから自由という話ではありません。
作品づくりとして楽しむ範囲と、法的に抵触し得る領域は別に考える必要があります。
こうした線引きを先に持っておくと、作ったあとで扱いに困る事態を避けやすくなります。
結論:最初の1体はどう作るのが現実的か
筆者の実践では、初回は週末2日構成にすると工程が回りやすく、1日目に出力と後処理、2日目にサーフェイサーから塗装、トップコートまで進めると、乾燥時間を確保できて仕上がりの粗が減ることが多かったです。
あくまで筆者の一例で、作るモデルや作業ペース、環境によって最適な日程は変わりますので、参考として調整してください。